交渉・調停・訴訟の違い
相手方がある事案の場合、弁護士に依頼することができる手続の種類には、大きくわけて、交渉、調停、訴訟の3種類があります。
なお、ここでの説明は、離婚や相続等の家事事件以外の事案を前提にしています。
家事事件の場合は、いきなり訴訟をすることができず、まずは調停での話し合いをする必要があったり、調停が不成立となっても訴訟ではなく審判という手続が設けられていたり、事情が異なりますのでご留意ください。
【交渉】
交渉は、弁護士が依頼者の代わりに窓口となって、相手方と話し合いをする手続です。
通常、まずは依頼者の言い分をまとめた書面を、弁護士の名前で相手方に送付することから交渉がスタートします。
時効の問題がある場合など、必要に応じて、内容証明郵便を利用することもあります。
書面送付後は、相手方からも言い分を書面でもらったり、必要に応じて面談したりして、交渉の余地があるか探ります。
歩み寄りが出来ず、交渉での解決ができない場合には、長々と続けても時間の無駄ですので、裁判所での手続を検討します。
【調停】
調停は、裁判所に場所を移して、相手方と話し合いをする手続です。
裁判所では、調停委員2人と裁判官1人で構成される調停委員会が調停を担当します。
調停期日は、小さな非公開の会議室で開かれ、相手方と別々に交代で会議室に入り、調停委員会を介して双方の言い分をやりとりします。
裁判官は毎回期日に出席することはまれで、初回の期日や調停終了のときなど大事なときだけ登場することが多く、ほとんどの期日では、調停委員2人が中心となって双方の言い分を聞き取ります。
調停委員は、調停の内容により、弁護士や建築士等の専門家が選ばれることもあります。離婚事件などでは、比較的年配の男性と女性1人ずつの調停委員で構成されることが多いように思います。
調停は、裁判所が間に入るというだけで、あくまでも話し合いのための手続です。
そのため、双方で話し合いが成立しなければ、調停で解決することはできません。
調停期日は概ね1ヶ月に1回のペースで入ります。
2〜3回の期日を重ねて調停成立(双方で何らかの合意が成立する形での解決)の可能性がなさそうな場合には、調停委員会の判断で調停を打ち切られる場合が多いです。
【訴訟】
訴訟は、テレビドラマなどでよく見る法廷等で行われる手続です。
訴訟には裁判官3人で構成される合議事件と、裁判官1人のみの単独事件があり、どちらの構成となるかは、事件の複雑さ等により裁判所で判断します。訴訟がある程度進行した後で、当初単独事件であっても合議事件に変更されることもあります。
訴訟は調停と違ってケンカです。
双方の言い分を書面でやりとりし、証拠を提出して立証していきます。
ある程度主張と立証が尽くされた後で、裁判所から和解を進められることも多いです。
和解の余地がなければ、それまでに提出された主張立証に基づき、裁判所が結論を判断します。
訴訟にかかる期間は、事案によりますが、第一審だけでおおよそ1年間くらいかかることが多いです。
【どの手段を選ぶべきか】
全く交渉の余地がないケースであれば別ですが、多くの場合はまず交渉からスタートします。
その後、調停か訴訟を検討することになりますが、どちらが適切かは事案によります。
訴訟で勝訴の見込がそれほど強くない場合は、調停を申立て、中立な第三者を間に入れることで話し合いをする方が望ましいこともあります。
また、訴訟となると時間もかかり、それだけ弁護士費用もかかってきますので、費用対効果の観点から、調停をオススメすることもあります。
ある程度勝訴の見込がある場合、あるいは、相手方が全く話し合いに応じる意向がない場合は、どうしても決着をつけたいのであれば、訴訟をして強制的に裁判所の判断を仰ぐことになります。
その場合は、さきほどの弁護士費用の問題も考えながら、訴訟提起する価値があるかどうかを慎重に検討する必要はあるかと思います。
いずれにせよ、そもそも言い分が法的に理由があるものなのか、証拠は充分に揃っているのか、訴訟になったときの勝訴の見込はどの程度なのか、経費がどれだけかかるのか等、事案により全く異なってきますので、弁護士に相談してから判断するほうが安心です。