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【終活】争族を避けるために(4)遺言があるから安心、は本当か | 吉利 浩美弁護士

弁護士吉利のコラム

【終活】争族を避けるために(4)遺言があるから安心、は本当か

もう遺言もしっかり書いたから、相続争いなんて関係ない、と安心している場合も、油断は禁物です。

軽信していたがために、大問題になってしまいがちなケースをご紹介します。

 

波平とフネの間には、サザエ、かつお、ワカメの3人の子どもがいます。

サザエにはマスオという夫と、タラオという子どもがいます。

 

波平に先立たれたフネは、婿に入ってくれたマスオと孫のことを考えて、サザエに家を遺そうと考えました。

フネは、波平が亡くなった後、手持ちの現金もなかったので、ひとまず家のことだけを遺言に書くことにしました。

 

遺言には次のように書きました。

「台東区東上野3丁目17番8号に所在する、私の自宅の土地と建物は、サザエに相続させます。」

 

遺言を作成した3年後、不幸な事故で、サザエが急死してしまいます。

しかしフネは、3年前に書いた遺言があるのだから、家はサザエの子どもであるタラオが相続することになると思い込み、遺言を書き換えることなく、そのまま亡くなってしまいました。

 

さて、フネの遺産はどのように処理されることになるのでしょうか。

 

まず、被相続人であるフネの相続発生前に、推定相続人であったサザエが亡くなっているため、タラオは代襲相続人としてサザエの相続人としての地位を引き継ぎます。

したがって、法定相続分は、タラオ、かつお、ワカメが3分の1ずつということになります。

しかし、ここで重要なのは、家も3分の1ずつになってしまうということです。

 

フネが書いていた遺言は、あくまでも「サザエに」家を相続させる、という内容でした。

したがって、サザエが亡くなってしまった以上、その遺言は無効になってしまう可能性が高いのです。

もちろん、フネの遺言は、「フネが死亡する前にサザエが死亡した場合には、タラオに相続させる」という趣旨だったとの考え方が全くないわけではありませんが、そのような主張を裁判所に認定させるには、そのような「フネの意思」を推認させる証拠を集める必要があります。

かつおとワカメからの理解が得られなければ、家も3分の1ずつの相続分に従い分割することになるでしょう。

 

では、フネはどうするべきだったのでしょうか。

望ましいのは、最初に遺言を作成する段階で、「フネが死亡する前にサザエが死亡した場合には、マスオに、マスオも死亡していた場合にはタラオに相続させる」との文言を入れ込むことでした。

そうでない場合でも、サザエが亡くなった段階で、過去の遺言を再確認すべきでした。

 

遺言は一度書いたら以後もずっとそれで安心、というわけではありません。

定期的な見直しが必要なことを忘れないでおきましょう。

吉利 浩美弁護士