【終活】争族を避けるために(5)養子縁組と相続権
養子縁組も相続問題を複雑にすることがあります。
養子縁組をした場合、その養子の子は相続にどのように関係してくるのでしょうか。
わかりやすいように、具体例を考えてみましょう。
磯野藻屑源素太皆には、波平という子どもが1人だけいました。
波平は、フネと結婚しましたが、しばらく子どもに恵まれず、サザエを養子にとることにしました。
サザエは既にマスオと結婚し、タラオという子どもがいました。
波平とフネは、サザエとだけ養子縁組をし、タラオとは養子縁組をしませんでした。
波平とフネには、その後、カツオとワカメという2人の子どもに恵まれました。
それからしばらくして、サザエが亡くなり、しばらくして波平とフネも亡くなりました。
タラオは、祖父母の相続人は、サザエの子どもである自分と、カツオ、ワカメの3人であると思い込み、遺産分割協議を進めようとしました。
どうなったでしょうか。
この場合、タラオは、波平夫婦とサザエが養子縁組をする前に生まれていた子ということになります。
民法は、「被相続人の直系卑属」にあたらない場合には、「相続権を失った者の子」であっても、代襲相続を認めていません(民法887条2項)。
そして、養子縁組をした場合の血族関係は、「養子」と「養親およびその血族」とだけに生じるのであり、「養親」と「養子の血族」との間に生じるわけではありません(民法727条)。
どういうことかというと、養子縁組によって、サザエと波平・フネとの間には血族関係が生じますが、波平・フネとタラオとの間には血族関係が生じないので、タラオは「被相続人(波平・フネ)の直系卑属」にあたらない、つまり、代襲相続できないとういことです。
結果として、波平とフネの法定相続人は、カツオとワカメの2人だけということになります。
このケースが、波平夫婦とサザエが養子縁組した後にタラオが生まれたという場合であれば、話は別です。
養子縁組により波平夫婦とサザエに血族関係が生じており、サザエは波平夫婦の嫡出子としての身分を取得しますから、嫡出子の子であるタラオも当然、「直系卑属」となり、代襲相続できることになります。
養子縁組をした子の子はいつでも代襲相続できる、ということではありません。
身分関係に変動があった場合には、必ず、相続関係の整理が必要です。
(おまけ)
磯野藻屑源素太皆は、波平の父親ではないみたいです。
参考:サザエさん家系図