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不倫慰謝料の相場が下がっているとかなんとか | 吉利 浩美弁護士

弁護士吉利のコラム

不倫慰謝料の相場が下がっているとかなんとか

お昼休みは、家から持ってきたおにぎらずと、コンビニで買った惣菜、インスタントみそ汁を準備して、デスクで手早く食事をとることが多いです。食事の合間に、ネットサーフィンをすることも多いんですが、こんな記事がありました。

 

「有名人の不倫醜聞の影響で慰謝料の相場が下がっている!?」(NEWSポストセブン)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170705-00000013-pseven-life

 

なかなか目をひくタイトルですね。

記事の内容はさておき、そもそも日本の慰謝料は低いのです。

芸能ニュースか何かでよく目につく、海外セレブの慰謝料やらなんやらは、お伽噺と言ってもいいレベル。

どんなに高くても慰謝料300万円というのが、法曹界のおおかたの共通認識ではないでしょうか。

 

1年間ほどかけて離婚訴訟で慰謝料を請求し、訴訟のなかで弁護士との打ち合わせ、書面作成、尋問の練習、法廷への出廷などなど、数えきれない時間をかけて慰謝料を手にしても、時給はマックのバイト以下、なんてことも珍しくもなんともありません。

 

そして私はあまり、こと不倫慰謝料に関しては、「相場」という言葉は使いたくありません。

交通事故など、ある程度客観的資料(赤本など)で基準があるものであればともかく、不倫慰謝料は気持ちの問題です。

結婚期間が何年で、どのくらい不倫していて、という相関式で数字がはじきだされるものではありません。

ましてや、訴訟になれば決めるのは裁判官、人間ですから。

 

さらにさらに、往々にして、不倫関係の当事者みんなに言えることでしょうが、訴訟にはしたくないというのが人情。

公開の法廷で聞かれたくないことあれやこれや聞かれるわけですから、当然です。

となると、ますます「相場」なんてものはなくなります。

 

決定打になるのは「どれだけ守るものがあるか」にかかっていると思っています。

訴訟になり、不倫が公知となることで知られては困る対象がどれだけいるか。夫、妻、親、子ども、職場、近所の人(後2者は訴訟=即広まるというわけではないでしょうが)etc。

慰謝料請求を受けた側が、既婚者で、お堅いお仕事で職場にも家族にも不倫の事実を知られては困る、ということになれば、高額な慰謝料を請求されても訴訟を避けるために応じざるを得ないことになるでしょう。

 

なので、慰謝料は「相場」を語れるものではない、と思うわけです。

吉利 浩美弁護士