念書にサインしてしまったら
根拠のない請求とわかっていたのに、念書にサインしろと言われてサインしてしまった。
そのような相談は、意外と多いです。
例えば、相手方の家に呼び出され、莫大な金額の慰謝料を払うという内容の念書を書かないと帰さないと言われた。
あるいは、何時間も責められて、この状況から解放されたくて求められるまま念書にサインしてしまった。
などなど、状況は様々です。
ただ、いずれの場合にも共通して言えるのは、何らかの書面にサインしてしまった場合には、ほぼアウトだ、ということです。
仮に、念書に書いてある内容が根も葉もない内容であったとしても、その念書自体を根拠として法的効果が生じてしまいます。
例えばわかりやすいのが不倫慰謝料の場合でしょうか。
裁判例に照らせば慰謝料が100万円も認められないようなケースで、500万円の支払いを約束する念書をサインしてしまった場合を考えてみましょう。
仮に、訴訟を提起して、慰謝料の支払を請求されたとしても、100万円しか認められません。
しかし、念書に基づく支払を請求して訴訟を提起すれば、500万円の請求が認められてしまうのです。
そうなってしまえば、反論できる手段は限られます。
騙されてサインしたという詐欺取消の主張、あるいは、脅されてサインしたという脅迫取消の主張などが主たる例です。
ただ、詐欺があった、あるいは、脅迫があった、という事実を立証する責任は、念書にサインした人にあります。
言った言わないの話になったとき、果たしてそのような事実を立証する手段はあるのでしょうか・・・。
一番大事なことは、簡単に書類にサインしない、ということです。
後でなんとかなる、などと安易に考えると、確実に後悔します。